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誰かにとっての「キッカケ」となる場づくりを
-KIKKAKE PLACE・兵庫区下祗園町-

かつての賑わいが薄れていた商店街

レトロな雰囲気が漂う緑色のアーケードが目印の兵庫区の平野商店街。戦後、大いに栄え、昭和の高度成長期の賑わいを象徴する地域の一つでしたが、近年はシャッターを下ろした店も目立つようになりました。当時を知る人たちからすれば、その変わりようは寂しく感じるものです。

商店街の一角、交差点に面した角地の物件もまた、20年ほど前から空き家になっていました。所有者の方は、父親からかつてのまちの様子や、和菓子、焼鳥、靴など、さまざまな店舗として利用されていたことを聞き、この場所をどうするべきか、ずっと気になっていたと言います。

「家は人が行き交い、息を吹き込んでこそ。誰かに使ってもらわないとどんどん傷んでしまいます。一番目立つ立地ですし、シャッターが下りているとどうしても目立ってしまうので、なんとかしたいと思っていました」(所有者)

とはいえ、自分たちで新しいビジネスを始めることはなかなか難しい状況でした。このままにしておくよりは何か良い方法が見つかるかもしれない……と、2021年に神戸市の「空き家・空き地地域利用バンク」に登録したところ、意外にもすぐに建物に興味を持つ団体が現れました。


DIYの過程を発信し、コンテンツ化

この空き家を使いたいと手を挙げた団体の代表・光山和弥さんは、神戸市内にある実家の石材店で経営を学ぶかたわら、ご自身で地域再生や空き家活用を手がけています。これまでにも有馬温泉で空き家を店舗にリノベーションした経験がありました。
「古い空き家に新しい価値を見出し、地域を活性化する手助けをできたことが、とても嬉しくて。もっとやってみたいと思って、場所を探していたんです。実際に平野に来て所有者の方ともお話しし、『ここだ!』と思いました」(光山さん)

長らく使われていなかった建物は老朽化が進んでいましたが、神戸市の支援制度を使ったり、SNSで募った仲間とともにDIYをしたりして、リノベーションを進めました。

また、リノベーションの過程をSNSで発信。そうすることで周囲からの注目も高まり、「プロセス自体が自分たちの資産となり、新たな人たちとの出会いにも繋がる」と光山さんは話します。SNSを“キッカケ”に、まちづくりを学ぶ大学生が手伝ってくれることになるなど、結果的にリノベーション費用を抑えることができました。

現代的な手法を駆使することで、空き家活用の進め方を進化させているのです。


挑戦する人たちを応援する場に

ご近所のお店の方や地域の皆さんから「何ができるの?」「楽しみにしているよ!」と温かく見守られながらリノベーションは進み、2022年2月に「KIKKAKE PLACE」が完成しました。

店内にはキッチンとカウンター席が整備され、出店や起業を目指す人たちがお店づくりを体験できる「チャレンジショップ」として利用できます。現在は定食屋さんやカフェなど、日替わりでさまざまなお店が出店し、地域のにぎわいづくりの一役を担っています。また、木のぬくもりと間接照明のあたたかい光に包まれる店内には、平野のまちの様子とはちょっと違うお洒落な雰囲気が漂っています。

「もともとはチャレンジショップを作るというアイデアはなかったのですが、起業したくてもなかなか一歩が踏み出せない方の話をよく聞いていたので、応援する場になればいいなと思い付きました。できるだけ利用料金を安く設定して、挑戦しやすい環境を整えています。いつか自分のお店を持ちたいという方に練習台として気軽に使ってほしいです」(光山さん)


継続したキッカケづくりを商店街とともに

オープン後、「KIKKAKE PLACE」には、地元以外からも多くの人が訪れるようになりました。また、光山さんの発信力によって、大学生が店舗経営を体験する場所として活用されるなど、新たな繋がりがどんどん生まれています。取材に訪れた日も、大学生たちが集まり、この場所を使ってどのようなお店をやりたいのか、熱気に溢れた話し合いが続いていました。今まで平野商店街を知らなかった人たちがやって来る“キッカケ”になっているのです。

「この場所を作ったことがゴールではなく、いかに継続するかが一番大事です。将来的には、この場所から羽ばたいた皆さんが活躍することで、また新たに挑戦したい人が集まるといった循環が生まれるようにしたいと思っています」(光山さん)

店舗のある1階に始まり、もともとは住宅だった2階部分の改修にも着手しようと光山さんは計画しています。これからもまた新たな“キッカケ”が次々に生まれていきそうです。

~所有者の声~

 
継続的に人がやって来る場所になってほしい
「日替わりでレンタルされるお店があることは知っていましたが、平野商店街でできるとは思っていませんでした。たまに夜に出店されていることもあります。商店街はお年寄りが多いので、あまり夜は出歩かないのではと思っていたのですが、近所の方からも『行ったよ』とお声がけいただくこともあって嬉しいです」
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