よくある質問 Q&A
1持ち家の場合
1.被災直後にすること
床下浸水の後、何をすればよいですか
豪雨で床下浸水しました。水はひいたようなので、放置しておいても大丈夫でしょうか。
床下浸水の場合、住宅周辺の水がひいても、基礎内部に水が残ってしまうことがあります。必ず、床下を点検しましょう。水が残っていた場合は、ポンプやバケツで排水し、泥があれば取り除きます。そのうえで、送風機などを使って乾燥を促します。浸水した水には下水道から逆流した汚水が含まれていることがあるので、乾燥後は消毒も必要です。また、木造住宅で土台や柱の木部が浸水した場合は、表面的には乾いていても、水分が抜けきらずに少しずつ放出されることで湿度が上がり、シロアリ発生の原因になることもあります。防蟻処理もしておきましょう。
2.被災者支援情報の取得
瓦屋根の補修に助成金はありますか
屋根の瓦が落ちたりずれたりして、室内に雨漏りがしています。補修に対する助成金はありますか。
災害により住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して支援金が支給される公的支援制度があります。
受給には「罹災証明」が必要で、損害の程度によって支給される金額が違います。
罹災証明ってなんですか
住宅に被害があったとき、罹災証明をとっておくとよいと聞いたのですが、罹災証明とはなんですか。また、どこで発行してもらえますか。
生活保護を受給中に被災しました。住宅の修繕への補助金はありますか
生活保護を受けています。台風の被害で自宅の屋根が破損して雨漏りしていますが、収入は保護費だけなので修繕費用がありません。補助金はありますか。
国がその被害が特に大きく、復旧に困難が伴うと認めた特定災害の場合、被災の程度によって「生活再建支援金」などが支給され、生活保護を受給していても自宅の修繕費用にあてることができます。また、被災の程度が軽く、支援金の対象にはならないが、居住するためにどうしても修理が必要な場合は、生活保護制度より住宅維持費として修繕に必要な費用(上限あり)が支給される場合があります。どちらにしても修繕が必要な場合はまずケースワーカーに相談しましょう。
3.近隣への対応
地震の後、隣の家が傾いて自宅に倒れてきそうです。修理を要求できますか
地震で隣の家が自宅の方に傾いていて、屋根瓦や外壁が落ちて自宅に当たらないか不安です。隣人に補修を要求することはできますか。
自宅を守る権利があり、その権利が侵害されそうな場合、その予防を要求するのは正当なことです。ただ、隣人が必ずその要求に応じるかどうかはわかりません。隣人と話し合っても修理されないようなら、自宅側にフェンスや塀を建てて、被害を未然に防げないか検討してはどうでしょう。
台風で飛んできたもので窓が割れたら、修理を請求できますか
お隣の駐車場のカーポートの屋根が台風で剥がれて飛び、うちの窓ガラスが割れました。お隣に修理代を払ってもらえるでしょうか。
基本的には、自然災害による不可抗力という考え方で、お隣に修理代を求めることは難しいでしょう。
ただし、お隣のカーポートがもともと古くなって屋根が浮いていたなど、管理が適切にされていなかった場合は、不可抗力とはいえません。とはいえ、今後もお隣とのお付き合いは続くので、一方的に要求を突きつけるのではなく、話し合うという姿勢が大切です。
また、火災保険に台風被害の特約があれば、保険金で修理できる場合もあります。
災害が原因で、隣家との境界線が分からなくなりました
土砂崩れがあって、隣地との境界標がなくなってしまいました。どうすればよいでしょうか。
4.業者トラブルへの対応
建売住宅の引き渡し前に、台風で破損。契約解除できますか
建売住宅の建築中に売買契約をしましたが、引き渡し前に台風にあい、内見にいったところ屋根が一部剥がれ、室内に雨漏りがしています。販売業者は修理して引き渡すといっていますが、信用できません。また、一度雨漏りしているのに新築として購入することに納得がいきません。売買契約を解除できないでしょうか。
標準的な不動産売買契約書には、引き渡し前に、災害など売主、買主のどちらの責任でもなく売買される住宅が全壊するなど、住宅としての価値がなくなった場合、買主は契約を解除できるとしています。この場合、売主はすでに受領している代金があれば返還しなければなりません。
しかし破損したのが一部であれば、売主側が修理して引き渡す義務があります。買主がその修理を拒んで契約を解除する場合、手付金を放棄することになるでしょう。まずは、契約書の内容をよく確認したうえで、販売業者と話し合いましょう。
新築住宅購入後に被災したら、契約を解除できますか
新築住宅の購入契約をしましたが、引き渡しの前に地震があり、建物が傾いてしまいました。契約を解除できますか。
標準的な売買契約書では、引き渡し前の建物が滅失、毀損した場合、買主は契約解除できることになっています。建物の傾きは重大な欠陥であり、そのままでは住むことができない(=契約の目的が達せられない)ので、買主は契約を解除できます。また、すでに払った費用については、すべて返還を求められます。
新築工事中に被災。やり直す費用は誰が負担しますか
新築工事中に地震があり、基礎のコンクリートに亀裂が入りました。地盤の改良も含めてやり直しを求めたいのですが、費用は発注者か施工会社かどちらが負担するのでしょうか。
標準的な工事請負契約では、災害などの不可抗力による損害は、発注者及び受注者が協議して重大なものと認め、かつ、受注者が善良な管理者としての注意をしたと認められるものは、発注者が負担することになっています。施工会社が「建設工事保険」に加入していれば保険金の範囲内で損害が補填されます。契約書を確認するとともに、施工会社と充分に話し合うことが必要です。
屋根の葺き替え工事を契約しましたが、費用が高いように思います
応急処置で屋根にブルーシートをかけてくれた業者が、この際全面的に葺き替えをしたほうがよいというので、工事契約をしましたが、よく考えると金額が高いように思います。工事を中止できるでしょうか。
工事内容や金額が適正かわからないといった場合は、下記の見積チェックサービスをご利用ください。
修理業者がなかなか来てくれません。どうしたらよいでしょう
台風で自宅の瓦が一部剥がれてしまいました。瓦業者に修繕工事を依頼したのですが、いつまでたっても来てもらえません。どうすればよいですか。
台風被害で一番多いのが屋根の損傷・損壊です。限られたエリアに被害が集中するため、被害が多ければ多いほど、なかなか手が回らないと思われます。瓦業者以外に応急処置だけでも頼めないか、また被災したエリアから離れた土地の業者に来てもらえないか聞いてみるなどしてみましょう。
5.その他の対応
自宅が全壊したら住宅ローンを払わなくてもよいですか
自宅が地震で全壊しました。住宅ローンが残っていますが、住宅がなくなっても続けて支払う必要はありますか。
半壊した住宅が再建できず取り壊します。住宅ローンの借入先に知らせたほうがよいですか
地震の被害にあって自宅が半壊しました。再建の費用がないため取り壊して土地を売却しようと思います。住宅ローンの借入先に取り壊すことを知らせたほうがよいですか。
住宅ローンの返済中は、その住宅に抵当権が設定され、債務の担保となっています。もし、ローンが返済されなくなったときは、担保物件を差し押さえて債務を回収するためです。その担保物件がなくなると、債権者は債権の回収に高いリスクを負うことになりますので、担保物件の所有者は、その建物の価値を保存・維持する義務があり、取り壊す際は、債権者の同意を得る必要があります。利用している住宅ローンによっては、担保である建物がなくなった場合には、残額の一括返済や追加担保の差し入れなどが契約に規定されている場合もあります。
分譲マンションの窓ガラスの修理代は誰の負担でしょうか
分譲マンションのベランダ側の窓に強風で折れた木の枝が当たって、割れてしまいました。管理会社に言ったところ、自分で修理するように言われましたが、管理会社が修理するものではないでしょうか。
分譲マンションでは、管理会社は管理組合の委託を受けて、管理業務を行っているので、実際に修理を行うのは管理組合または区分所有者のどちらかです。そのどちらかということは、管理規約によって窓ガラスが「共用部分」か「専有部分」のどちらに定められているかによって違います。国土交通省が作成しているマンション標準管理規約では、「窓およびガラスは専有部分に含まない」とされています。つまり窓ガラスは共用部分であり、管理組合が修理費を負担します。管理規約をよく確認するとともに、管理組合に相談しましょう。
災害が原因で、権利証がなくなりました。再発行できますか
土石流の被害にあい、自宅の権利証がなくなりました。特に使う予定はありませんが、売買や相続のことを考えると再発行しておいたほうがよいでしょうか。
権利証とは登記簿が電子化される前に「登記済証」として法務局が発行していたもので、電子化されて以降は「登記識別情報」として12桁の英数字が印字されたものが登記をした際に発行されます。このいずれも紛失すると再発行はできません。権利証がなくなっても所有者など登記事項は変わりません。もし、第三者が権利証を取得しても、権利証だけで所有権を移転することはできません。紛失した場合は、法務局に不正登記の防止を申し出ておけば、それから三か月の間、当該登記簿に変更の届があったときに名義人に通知がされます。登記識別情報の場合も法務局に届け出れば識別情報を無効化できます。万が一、不正に所有権が移転された場合も、裁判で確実に取り戻せますのでそれほど心配する必要はないでしょう。
地震で大きく揺れた家に住み続けても大丈夫でしょうか
築30年くらいの木造2階建てに住んでいます。何度か大きな地震にあいましたが、見たところひび割れなどの破損はありません。このまま住み続けても大丈夫でしょうか。
地震の後は目立った破損がなくても、住宅診断を受けることをお勧めします。目に見えない部分やちょっとした不具合でも放置しておくと、後々、大きな破損につながって住宅の寿命が縮んでしまうことがあります。早めに点検、修理をすることで安心して住み続けることができるでしょう。ただし、地震や台風などの災害直後に訪問してきて「無料点検します」という業者には要注意です。点検後にありもしない被害を報告して、高額な修理工事の契約をさせる悪質な業者があります。業者はあわてず、慎重に選びましょう。
2賃貸住宅の場合
1.賃貸住宅への対応
賃貸アパートが被害を受け、退去するよういわれています
居住中の賃貸アパートで、台風のため屋根が一部壊れて雨漏りするなどの被害があり、貸主から、この機会に取り壊すので、退去してほしいといわれていますが、退去するしかないのでしょうか。
アパート全体が倒壊や焼失でなくなってしまわない限り、賃貸借契約は終了することはありません。建物の一部が壊れた場合は、貸主は借主が引き続き居住できるよう修理する義務がありますので、退去する必要はありません。貸主の取り壊しの意向が強く、どうしても退去して欲しいというなら、立退料を請求することができます。ただし、建物の一部といってもその修繕費が新築時を上回るほど高額であったり、貸主に修繕する経済力がない場合は、契約終了となる場合があります。
建物全体が倒壊するなど、住宅としての機能が完全に失われた場合、貸主は建物を貸して家賃を得ることができなくなるので、賃貸借契約を終了します。
賃貸住宅が被災。修繕のための仮住まい費用は払ってもらえますか
賃貸住宅の一部が損壊して、貸主が修繕をするので、その間、移転先を探して仮住まいをするよういわれました。引っ越し費用や移転先の家賃は、貸主に払ってもらえますか。
民法606条(※)によって、賃貸住宅の修繕が必要なときは、借主は貸主に協力する義務があります。仮住まいに移転しないといけないかどうかは程度問題ですが、必要であれば引っ越し費用や家賃は借主が負担しなければなりません。破損の原因が災害で、貸主の責任ではないからです。ただし、修繕している賃貸住宅の家賃は、当然支払いの必要はありません。
※民法606条
1 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
賃貸マンションでテレビのアンテナが破損。家賃は下げてもらえますか
賃貸マンションに居住中、強風で屋上のテレビアンテナが破損し、修理に1か月ほかかったため、その間テレビが見られませんでした。その分の家賃を下げてもらうことはできますか。
2.賃貸トラブルへの対応(賠償責任・修繕費)
「建物の修繕は借主が行う」という特約は災害時でも有効ですか
賃貸住宅のベランダが災害で壊れてしまい、使用できません。契約書の特約に「建物の修繕は借主が行う」と記載されています。災害による大きな損害でも、借主が修繕しなければなりませんか。
賃貸借契約の特約で、借主が修繕を行うことになっていても、修繕の対象は日常的に起こる破損や故障、経年劣化など、借主が予測できる程度のものがその対象であり、大規模災害などによる予測できないような被害は含まれないと考えられます。ただ、過去の判例では、自然災害の場合、必ずしも貸主に修繕義務を負わせることはできないようです。修繕費負担について、貸主と借主が十分に話し合うことが必要です。
賃貸住宅の屋根が破損。修繕費は誰の負担でしょうか
災害で、住んでいる賃貸住宅が被災しました。屋根が傷んで雨漏りしているのですが、貸主が修繕してくれません。自分で業者を呼んで修繕をした場合、貸主に修繕費用を請求できますか。
借主は、貸主に修繕を依頼しても応じない場合、修繕が必要であることを通知したうえで、自ら修繕することができます。貸主に無断で修繕を行うと、必要な修繕の範囲、価格や仕様についてトラブルになることがありますので、必ず事前に修繕内容や費用について通知しましょう。また、貸主が費用の支払いに応じない場合は、調停や裁判など法的な手続きが必要となりますので、弁護士に相談するとよいでしょう。
<無料弁護士相談が受けられるところ>
すまいるネット(専門相談) 078-647-9900
神戸市役所 市民相談 078-321-0033
各区役所 市民法律相談 078-333-3330
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)03-3556-5147
兵庫県弁護士会総合法律センター 078-341-1717
(※民事交通事故相談、多重債務相談のみ無料)
法テラス兵庫 0570-078374(所得制限があります)
借家の瓦が落ちてお隣の車に傷が。修繕費は誰が払うのでしょうか
地震で、住んでいる借家の瓦が何枚か落ちて、お隣の車にあたり、傷をつけてしまいました。修理代を請求されているのですが、払わなければいけないのでしょうか。
瓦が落ちた原因が地震だけでなく、日頃の管理の悪さや、老朽化を放置していたことが間接的な原因であった場合は借主にも責任があります。ただし、借主がその修理を貸主に依頼していたのに貸主が放置していた場合は、借主に責任はありません。
賃貸住宅のベランダから植木鉢が落ちて、お隣の屋根を破損。修繕費を払わないといけませんか
台風でベランダに置いていた観葉植物の植木鉢が飛ばされ、建物の外壁や隣の家の屋根が破損しました。貸主から、外壁の修繕費と隣の屋根の修繕費を請求されています。不可抗力だと思うのですが、修理費を払わないといけませんか。
台風はある程度予測できる災害なので、この場合、借主は植木鉢を屋内に移すなどの注意をしていれば、被害は起こらなかったかもしれません。借主の手入れ等管理が悪く発生した被害であれば、貸主に対しては善管注意義務(※1)違反による責任、隣家には不法行為責任(※2)を負うことになるので、修理費は借主が負担することになります。
※1 民法400条をもとに賃貸物を借りている人は、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者として注意をもって、借りたものを保存する義務があるという考え方。
※2 民法709条に「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められているもの。